奥手な二人の両片思い
翌日。



「顔面良し! 服装良し! 持ち物良し! 後ろ姿も良し!」



鏡で全身を確認し、最後にもう一度持ち物を確認して家を出た。



「綿原さ~ん!」



一足先に駅に着いていた彼女に手を振る。

んん⁉ あっちも白い帽子⁉ 服は違うけど、またお揃い⁉



「おはよう上川くん。……また帽子同じだね」

「だね。行こっか」

「うん」



少し恥ずかしそうに頷いた綿原さん。

帽子のつばで顔が見えにくいのが残念!
あぁいかんいかん、顔が危ない奴になってた。

気をつけろ怜也!
いくら帽子を被ってるとはいえ、ニヤニヤしていたら、余計不気味に見えて怪しまれてしまうぞ!


深呼吸をして表情を整え、電車に乗り込んだ。



「ええっ⁉ 魚の勉強してたの⁉」

「うん。せっかくなら少しでも知ってたほうが楽しめるかと思って」

「もしかして、最近疲れた顔してたのってそのせい?」

「……うん」



驚いている彼女に小さく頷いた。

綿原さんの前では、普段通り元気を装っていたけれど、気づかれていた様子。

俺としたことが、心配をかけてしまった。



「体調悪いのかなって思ってたけど、どこも悪くないなら良かった」

「心配かけてごめんね。見ての通りもうピンピンしてるから安心して!」



笑顔を見せると、フフフッと笑い返してくれて一安心。
今までの疲れが吹っ飛んだ気がした。
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