奥手な二人の両片思い
「ねぇねぇ」



しばらく電車に揺られていると、綿原さんが小声で話しかけてきた。

彼女の目線を辿ると、優先席におじいさんと、見覚えのあるおばあさんが座っている。


あ、確かあのおばあさん、始業式の日に駅で会った……。



「「こんにちは~」」

「あら! この間のお嬢さんとお兄さん!」



まだ電車内に余裕があったため、おじいさんとおばあさんの近くに移動した。

数ヶ月前なのに、覚えててくれてたんだ。



「聞いたよ。君達が妻を助けてくれたんだね。ありがとう」

「「いえいえ!」」



夫婦揃って落ち着いた印象に見えたけど、意外にもおしゃべり好きで、話がとても面白かった。

周りの迷惑にならない程度に雑談を楽しみ、30分後、目的地付近の駅に到着。

おじいさんとおばあさんに挨拶をして電車を降りた。



「めちゃめちゃ面白かったね~!」

「ね! あっという間だったよね!」



なんとおじいさん、小学生の時におばあさんにプロポーズしたんだとか。

最初はまだ子どもだったから断られたけど、大人になってもう一回プロポーズしたんだそう。

そんな一途なおじいさんにおばあさんも心を許して、結果、無事成功して結婚したんだって。



「ピュアッピュア過ぎるぅ~! なんかすげぇ心洗われた!」

「聞いててキュンキュンしたよね~!」



朝から……あ、もう昼か。
こんな素敵な話を聞けて、今日はいいことありそう!
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