奥手な二人の両片思い
穴があったら入りたい気持ちを抑えながら食事を済ませ、イルカショーを見に会場へ。


うわぁ、人多っ!

前の席が全然空いてなかったので、一番後ろの席に座った。

開演時間まで、彼女と一緒に予習をする。



「ねぇ、ここって他に何の動物がいるの?」

「オットセイはいないけど、オタリアならいるよ」



オタリア……は、アシカのページに載ってたやつだ!



「トドに似たやつでしょ!」

「そうそう! アシカの仲間で~」



よし! 挽回成功! やっと勉強の成果を出せたぜ!


開演時間になり、ショーが始まった。

トレーナーさんの合図で、イルカ達がジャンプしたり、くるくる回ったり、ボールを蹴っている。

イルカってこんなに芸達者なんだなぁ。可愛い。


すると、今度は立って泳ぎ始めた。



「おお~! すげぇ~!」



約10分間、綿原さんと一言もしゃべらず、夢中で観ていたらあっという間に終わってしまった。



「楽しかったね~!」

「うん! イルカってあんなに跳ぶんだね~!」



初めてイルカを生で見て、海の生き物に少し興味が湧いてきたかも。



「ねぇねぇ! 近くまで行ってみようよ!」

「えっ、行けるの?」



ショー終わりのイルカ達を見に、水槽の近くに行った彼女の跡を追う。

うわ、前の席びしょびしょじゃん。
あ、だからカッパ着たりタオル持ってた人がいたんだ。



「イルカちゃ~ん、お疲れ様~!」



綿原さんがイルカに手を振ると、それに答えるかのようにイルカ達が近くにやってきた。
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