奥手な二人の両片思い
足を滑らせないよう、ゆっくり階段を下りて水槽に近づく。

おお、けっこう可愛い顔してるな。



「イルカさんこんにちは~……うわっ!」



挨拶した瞬間、イルカが水面に尻尾を叩きつけて水しぶきを上げた。


う……びしょびしょ……。

ハッ……! 綿原さんは大丈夫なのか⁉



「アハハ~! 元気だね~!」



慣れているのだろうか、気にせず笑っている。



「ねぇ大丈夫なの? このイルカ、俺達のこと嫌ってるんじゃない?」

「え~? 嫌ってはないと思うよ? 私いつも近くに行くけど、毎回呼ぶとこっち来てくれるし、水もかけてくるし……」



マジかよ。
っていうか、毎回って言うくらい何回も来てたんだ。

話していると、また水をかけてきた。



「……このイルカさ、俺らにやきもち妬いてるんじゃない?」

「そうなのかな。じゃあちょっとだけ遊ぼっか!」



5分くらいイルカ達と遊び、服を乾かした後、水族館の中に戻った。

10分後。



「…………」



なんだ、この変な顔した魚は。

深海魚らしいけど、深海魚はあまり勉強してないからわかんねぇ……。


ふと隣を見ると、綿原さんがジーっと隣の水槽の魚を見つめている。

何見てんだろ……え、この魚全然動いてなくね?

ジーっと見てて楽しいのか……?



「全然動かないねこの魚。いつ動くか見てたのに微動だにしないよ。おーい」



綿原さんが呼びかけるも、もちろん反応はなく。

こんなに動かない魚もいるんだな。
魚って奥が深い……!
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