奥手な二人の両片思い



「ちょっと早かったかな……」



電車が来る20分前に駅に着いた。
ベンチに座り、持ってきた漫画を読んで時間を潰すことに。

何回も読んでるから新鮮味はないけど、やっぱり面白いな。



「その本面白いですよね~」



夢中になっていると、突然男の人に声をかけられた。



「は、はい……そうですよね……」

「お姉さんは何の動物が好きなの?」

「えっ、と……」



穏便に済ませようと笑顔で答えたものの。
気があると勘違いされたようで、馴れ馴れしく隣に座ってきた。

恐怖で声が詰まる。

どうしよう、誰か、誰か……っ。



「俺の彼女に何か用ですか?」



後ろから聞き覚えのある声がして振り向くと、そこにはなぜか上川くんの姿が。



「あぁ……いや……すみませんでした……」



ニコニコ顔に圧力を感じたのか、男の人は急いで逃げていった。



「大丈夫だった? 何もされてない?」

「うん……ありがとう」



助かった……。
でも、どうしてこんな早く? まだ15分もあるのに。



「なんでこんな早く来たの……?」

「あぁ、漫画が楽しみすぎて早く起きちゃった」



いつものお茶目な笑顔に安心し、緊張が解けて頬が緩んだ。



「これ! 海の生き物の漫画!」

「おお~! ありがとう!」



満面の笑みで漫画を受け取った上川くん。
……彼女、かぁ。
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