奥手な二人の両片思い
「俺、将来学校の先生になりたくてさ。だから教え方上手いって言われてすごく嬉しくって」



なんだ、嬉しくて笑ってたのか。

上川くんが先生かぁ。
きっと生徒達から人気の先生になってそう。



「きっとなれるよ! 面白くて優しい先生になりそう!」

「ありがとう。元気出た! それじゃ続きしますか!」



──30分後、勉強を切り上げて帰路に就く。

駅のホームで電車を待っていると、突然上川くんが距離を縮めてきた。

えっ、急にどうしたの⁉ 肩、触れてない⁉


何度か電車内で至近距離になったことはあるのに……どうしてこんなドキドキするの?



「……今朝、彼女って言っちゃってごめんね」

「あっ……いや全然! むしろ助かったし……」



忘れかけていた今朝の出来事を思い出した。


確かにちょっとビックリしたけど、そのほうが確実に追い払えたと思うし。

多分、深い意味はない……はず。



「それでさ、またあぁいうのがあったらいけないから……明日から一緒に通学しない?」

「えっ! それって、毎日?」

「うん」



これは夢……? 現実……?
上川くんと毎日登下校できるの……⁉



「怖い思いさせたくないから……大切な友達だし」

「ありがとう……お願いします」



小さくお礼を言うと、安心したような顔で「こちらこそ」と返された。


大切な友達、か……。

なんでだろう……胸がモヤモヤする。
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