奥手な二人の両片思い
放課後。



「傷メイクってこんなに時間かかるんだ……」



上川くんが来るまで、スマホで傷メイクの仕方を見ながら校門で待つ。

あの勉強会以来、上川くんとは毎日登下校している。



「めっちゃリアルだね~」

「ひゃあ! ビックリしたぁ」



画面に夢中になっていると、後ろから上川くんがニョキッと現れた。

恥ずかしい。変な声出ちゃった。



「驚かせてごめんね。それってもしかして、仮装の日のメイク?」

「あぁ……うん」



こ、これはもしかして……代表者だって言う流れ⁉

「ゾンビになるよ!」って?
いやいや絶対言えないよ!



「実はね! 俺、清花ちゃんと一緒に医者の仮装することになったんだ!」

「へぇ~! そうなんだ~!」



医者……。
きっとゾンビに襲われて、人を助けるどころか、人の命を奪ってしまう医者になってしまうんだろうなぁ。切ない……。

なんて妄想していると。



「綿原さんも仮装のお手伝いするの?」

「へ⁉」

「俺達一人でそれぞれ準備するのは難しいから、男子と女子とで何人かに手伝ってもらうことにしたんだ」



あ、そういうことか。
確かに、1人で髪の毛やメイクと、準備するには時間がかかりそう。



「綿原さんのクラスは何の仮装するの?」

「えっと……お化けの仮装だよ!」

「へぇ、何系のお化け?」

「それは秘密! ネタバレはあまりしたくないらしいから」

「うわぁ~! めっちゃ気になる~! 当日までのお楽しみってことか~」



……私がやるってバレなくて良かった。
< 53 / 144 >

この作品をシェア

pagetop