奥手な二人の両片思い
翌朝。



「ええっ! 言ってないの⁉」

「だってぇ……」



登校して夏穂ちゃんに、昨日の放課後のことを伝えると、大きな声でツッコまれた。



「『今度はハロウィンメイクの勉強会しよ? ♡』って誘えたかもしれないのに」

「ハロウィンメイクって……それより中間テストの勉強のほうが大事だよ!」

「あぁそうだった。また二人で勉強会するの?」



勉強会、その単語に一瞬ドキッとした。



「……する予定だけど、だんだん外が暗くなってきたから、次からは昼休みにやろうって話になってる」

「女性を夜遅くまで付き合わせないようにってやつか。
上川って意外と紳士なとこあるんだね~」



紳士……か。

何度も助けてくれて、気遣ってくれて。
楽しませてくれて、励ましてくれて。

そして私を喜ばせようと勉強も頑張る上川くん。


もはや紳士というより……。



「ヒーロー……かな」

「上川がヒーロー?」

「うん。私がピンチの時にいつも助けてくれるの」

「わぁーお。菫ちゃんだけのヒーローってやつかぁ!」



わ、私だけのヒーロー……⁉
やだ、なんか顔熱くなってきた……。



「何の話してるの?」

「ヒーローの話!
そうだ、弘貴なら『ソルティホワイトHIROKI』って名前はどう?」

「なんだそれ」



笑い合う夏穂ちゃんと塩野くんを眺める。

私もいつか、上川くんと下の名前で呼び合えたらいいな。
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