奥手な二人の両片思い
そして中間テストが終わり、いよいよ仮装の時がやってきた。

クラスの女子達にヘアメイクを手伝ってもらい、急いで準備を進めること30分。



「トリックオアトリート……お菓子をくれなきゃ、お前達をゾンビにしてやる……!」

「いいぞー! 樫谷ー!」

「夏穂ちゃんいいキャラしてるー!」



クラスメイトから応援されて、さらにノリノリの夏穂ちゃんを見る。

1人で1クラス分をゾンビにできそうな勢いだ。



「綿原さんめっちゃ強そう~」

「背高いもんね~!」

「そ、そうかな……?」



クラスメイト達からの感想に笑い返す。

強そうって言われるのはあまり好きじゃないけど……今はゾンビになってるし。

むしろ強そうに見られたほうがゾンビ的にもいいよね!


クラスメイト達に見送られて、指定された教室へ。


──ガラガラガラッ。



「トリックオアトリート……」

「「「うわぁぁぁぁぁ!!!!」」」



入った瞬間、ドア付近にいる生徒達から悲鳴を浴びた。


……そんなに怖い?
まだトリックオアトリートしか言ってないのに。

みんなビクビクしながらお菓子渡してくるんだけど……。



「「失礼しましたーー」」



かすれ声で挨拶して教室を出ると、夏穂ちゃんが笑いかけてきた。



「みんなビックリしてたね! 楽しいねこれ~!」

「アハハ……そうだね……」



予想以上の反応にちょっと戸惑っちゃったけど、それだけ完成度が高かったってことだから自信を持とう。

次の教室に向かっていると、前方に医者の格好をした男女二人組を見つけた。
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