奥手な二人の両片思い
始業式が終わり、ロングホームルームが始まった。

春休みの宿題を提出し、進路希望書を書いて最後に委員会を決めることに。

去年はしなかったけど、今年はやってみようかな。



「続いて、風紀委員の希望者はいますか?」

「……はい」



誰にも聞こえないくらいの小さな声で返事をして手を挙げた。



「綿原さんですね。他に希望者はいますか?」

「はい! 私もやりたいです!」



その次に挙手したのは……樫谷さん⁉


黒板に名前が書かれる横で、彼女は「やったね!」とピースしている。

笑顔を浮かべている彼女に、私も小さくピースを返した。




「綿原さん、風紀委員頑張ろうね!」

「うん! ありがとう」

「ちょっと~、俺も仲間に入れてよ~」



放課後になり、樫谷さんと塩野くんと三人で下駄箱へ向かう。

知らない人と一緒だったら気まずかったけど、樫谷さんとなら安心だ。



「じゃあうちら自転車通学だからまたね!」

「また明日~」

「じゃあね!」



自転車置き場に向かう二人を見送り、校門を出たところで、後ろから誰かが走ってきた。



「綿原さ~ん! 一緒に帰ろ~!」

「菫~! 久しぶり~!」



やってきたのは、上川くんと清花だった。

同じクラスだから一緒に来たのかな。


徒歩通学の彼女と途中まで帰ることに。



「清花、髪切った? めっちゃ似合ってる!」

「ありがとう……」



1年の時は肩にかかるくらいのミディアムヘアだった清花。
今は顎くらいまでのショートボブになっている。
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