奥手な二人の両片思い
「黒瀬くんはどんな反応だった……?」

「めっちゃ笑ってた。『お姉さんに服借りるのか~?』って。いやいや、サイズ違うから入らないし、そもそも怒られるし」

「そういえばお姉さんいるんだったっけ。見たことないけど上川くんと似てるの?」

「……いや、全然」



あれ? ちょっと顔が険しかった気が……。
聞かないほうが良かったかな?



「ごめん。もしかしてあまり仲良くなかった?」

「あ、いや……性格が違うから話が合わないってだけ」

「そうなんだ。なら上川くんよりもちょっとおとなしい性格?」

「……男の前だけなら」

「ん?」

「ううん! 怒るとめっちゃ怖いよ!」

「へぇ〜、私のお母さんと一緒だぁ!」



最寄り駅に着くまで、家族の話で盛り上がった。



「菫、ちょっといい?」

「何~?」



帰宅して部屋着に着替え、バッグを整理していると、部屋の外から父の呼ぶ声が聞こえた。

ドアを開けると。



「ん? 何それ」

「菫へのプレゼント」

「えっ?」



プレゼント? 誕生日は数ヶ月前に終わっているのに……どうしたんだろう。

突然のプレゼントに驚きつつも、受け取って中を確認する。
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