奥手な二人の両片思い
チラッと視線を動かして、裏方でコーヒーを入れている上川くんを眺める。

店番が終わったら急いで女装するのかな。

黒瀬くんもだけど、今年はみんなと全然時間合わないな。

1人でも楽しめてはいるけれど、本音を言うと、ちょっと寂しい。



「後で菫の店にも行くね」

「本当? ありがとう!」



心の声を読み取ったように、クスッと笑った清花。

コンテストが終わった後に会おうと約束し、ミルクティーをもらった。


はぁ……温まる〜。

暖を取りながらテキパキと働いている上川くんを眺めていると、清花が教えたのか、小さく手を振ってきた。

飲みながら振り返すと、ニコッと笑顔に。


なんだろう……ミルクティーがさっきより甘く感じる……。


交代の時間が近づいてきたので、急いで飲み干して中庭へ。




「えっ? まだ残ってるの?」

「うん。フルーツタルトだけまだたくさんあるんだよね」



バックヤードに向かい、在庫を確認する。

完売したのは、チーズケーキやロールケーキなど、比較的手頃で人気があるケーキ。

他のケーキは余っているものの、それでも2、3個。

しかし……フルーツタルトだけがその倍以上残っているとのこと。



「美味しいのに……」

「他のに比べて値段が高いからかなぁ」



残されたフルーツタルト達を見つめる。

誰かお昼ご飯に買ってくれないかなぁ……。
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