奥手な二人の両片思い
「先生! こっちです!」

「お前ら……っ、何やってるんだ!」



声を振りしぼって叫んだ瞬間、先生達の姿が見えた。

安心して一気に全身の力が抜け、その場に膝から崩れ落ちるようにしゃがみ込む。



「……大丈夫ですか?」

「うん……」



モルくんが心配して声をかけてくれたものの、返事をするのが精一杯なくらい、体が震えていた。



「わ、綿原さん大丈夫⁉」

「っ……ごめんね清花……!」



先生達と一緒にやってきた、やたらデカい綺麗なお姉さんには目もくれず。

少し目が潤んでいる清花に抱きついた。


場所を変えて事情を説明する。



「……元々は私がモルくんを見つけて、『一緒に写真撮ろうよ』って言ったの」

「渋々承諾して撮っているところをあの先輩達に見られて、『俺らも一緒に撮りたい』って言われたんです。それで断ったらしつこくせがまれて……」



私が大声で騒いだから聞こえちゃったのかも。

何やってるんだろう。私が静かにしていれば、モルくんも清花も怖い目に遭わせずに済んだのに……。



「許せねぇ……一発ヒールキックかましとけば良かった……!」

「ごめんなさい、本当にごめんなさい……」

「菫、もう大丈夫だから。自分を責めるのはもうやめて?」



優しい声に涙が溢れ出す。

私よりも清花のほうが怖い思いをしたのに。
本当にごめんね……。
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