奥手な二人の両片思い
「ただいま」

「おかえり~って……綿原さん大丈夫⁉」



彼女と一緒に教室に戻ると、お弁当を食べている上川くんが慌てた様子で話しかけてきた。



「何かあったの?」

「あー……」



チラリと私の顔を見た青石さんと目が合い、咄嗟に俯く。

私、そんなに顔に出てた……?



「なんでもないの。じゃあね」



食事中に余計な心配をかけたくない。
素っ気なく答えて自分の席に戻った。






「綿原さん、途中まで一緒に帰ろう?」

「う……うん」



学校が終わって教室を出ようとしていたら、ドアの近くにいた青石さんに声をかけられた。

突然のことで驚いたけど、断る理由もなかったので承諾。一緒に昇降口へ向かう。



「今日は助けてくれてありがとう」

「いえいえ。本当無事で良かった」



わわわ、女の子と帰るなんていつぶりだろう。

出席番号最初の彼女と、最後の私。

席が角同士で1番離れているのもあって、友人の友人なのにも関わらず、ほとんど交流がなかった。


緊張のあまりカタコトなってしまっているけれど、彼女は気にせず話し続けている。

まだ女子への恐怖心が消えたわけじゃないけれど……青石さんになら話せるかな。



「あの……私、昔からなぜか男性に絡まれることが多くて。ずっと悩んできたの……」



ドキドキする心臓を落ち着かせて、意を決して打ち明けた。
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