奥手な二人の両片思い
「そうだったんだ……綿原さん優しいから、もっとハッキリ断ったほうがいいよ?」

「そうだよね……でも私、強く言えなくて……」

「うーん……それならせめて大声で助けを求められるようになるといいかな」



バカにするそぶりもなく、優しい助言が返ってきて胸を撫で下ろした。

大声か……。
人に強く言えない私にとって、大声を出すのはかなりレベルが高い。



「あと、絡まれそうになったら早足で逃げる。とか……」



真摯に対処法を考える青石さん。
早歩きで去るのはできそうだ。



「じゃあね綿原さん! また明日!」

「うん。ありがとう……!」



彼女に手を振って別れ、駅に向かう。

こんなことを願うのはおこがましい気がするけれど……もっと仲良くなれたらいいな。




【今日元気なさそうだったけど大丈夫だった?】
【あまり無理しないでね】
【何か困ったことがあったらいつでも言ってね!】



帰宅してスマホを開くと、上川くんから数件メッセージがきていた。

多分、青石さんに話を聞いたんだな。

でも、私に気を遣ってあれこれ深く聞いてこないのは、彼なりの優しさなんだろう。

心配している彼に、【大丈夫! ありがとう!】と返信してアプリを閉じた。
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