奥手な二人の両片思い
呼び止めてきたのは、この前購買に行った時に絡んできた先輩だった。

身体中に緊張が走る。



「あの……それで用件は……」

「この前あまり話せなかったから、話したくてさ。この後空いてるならみんなで遊ぼうよ」

「みんな……?」



聞き返すと、彼の後ろから購買で見た先輩達が続々と現れた。

脳内で警告音が何度も鳴り響く。


これは危険だ。今すぐ逃げないと。



「あの……すみません、私……用事が」

「え~、ここに来てくれたんなら時間少しは空いてるでしょ~」



蚊の鳴くような声で謝ったが、先輩に馴れ馴れしく肩を組まれてしまった。

全身がビクッと跳ねて、全身に鳥肌が立つ。



「やめてください……」

「おい、怖がってるじゃねーかよ」

「そーだぞー、もっと優しく組んでやれよー」

「あぁ~、ごめんごめん」



謝ってるわりには全然……むしろ力強くなってない?

逃げられないとわかると、目にジワリと涙が溜まってきた。



「泣かないでよ~! 俺らはただ仲良くしたいだけなのに~」

「そうだよ~! めっちゃ震えてんじゃん、大丈夫?」

「ひゃっ!」



脚を触られ、涙がボロボロこぼれ落ちる。

やだ、怖いよ、気持ち悪いよ。誰か、誰か……っ。



「…………助けて!」
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