奥手な二人の両片思い
「綿原さん‼」

「あ……青石さん!」



声を振り絞って叫んだ瞬間、息を切らした青石さんが現れた。

なんで青石さんが……⁉
今日は挨拶しかしてないのに……。


彼らを睨んだ彼女。前回と同様、手を引いて逃げ出そうとしたのだけれど──。



「やっぱり主席入学の子だ~!」

「めっちゃ美人~!」



邪魔させるかと言わんばかりに、2人の先輩に両腕を掴まれてしまった。



「ちょっと! 放してください!」

「テストも終わったし、みんなで遊ぼうよ!」

「お断りします。彼女を放してください」



先輩に拘束されているにも関わらず、淡々と強気で言い返している。

来てくれて安心したけれど、2人に拘束されているこの状況からすると、私達だけで抜け出すのは困難だ。



「冷たいなぁ~。保健室じゃあんなに優しかったのに~」



すると、階段の上から見たことない先輩が下りてきた。

青石さんの知り合い……?

会話を聞く限り、保健室で会ったことがあるようだけど……なんか様子がおかしい。



「いや~、盛大に転んだかいがあったよ~! 知ってた?
保健室に来る奴ら、みんな仮病かわざとケガしてるんだよ?」



呆然と立ち尽くしている青石さんに、先輩が耳元でニヤリと笑って囁いた。

マズい……!



「は……放してくださ……」



肩に回された腕を振りほどこうとしたものの、そのまま羽交い締め。

どうしよう、このままじゃ青石さんが……!



「気が強い女も悪くないな~」
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