奥手な二人の両片思い
気づくと彼女は、その先輩に顎を持ち上げられていた。

不敵な笑みを浮かべて顔を近づけていく。

まさか……!



「やめ……っ、うっ!」



羽交い絞めしている先輩に手のひらで口を押さえつけられてしまい、声が出せない。

ダメ! やめて……!



「っ……いやっ……!」


「君達何やってるの?」



青石さんの叫び声が聞こえた後──どこからか低い声が聞こえた。



「「「海先生……!」」」



冷たく突き刺すような目つきで睨む先生に怯え出した先輩達。

慌てて私と青石さんから離れるも、顔面蒼白になっている。

どうして海先生がここに……?



「綿原さん大丈夫?」

「黒瀬く……」



その場に立ち尽くしていると、黒瀬くんに声をかけられた。

もしかして、先生を呼びに行って……。



「すいませんでした……! 行こうぜ!」



彼らがバタバタと走り去っていった後、腰を抜かしてその場に座り込んでいる彼女の元へ向かう。



「ごめんなさい……私のせいで本当にごめんなさい……」



震える体を両手で押さえている彼女をギュッと抱きしめた。



「ううん、ケガしてない?」

「うん……ありがとう」



──その後、保健室でケガがないかを診てもらい、事情を詳しく説明。

後日、2度と私達に関わらないと謝罪を受けた。
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