奥手な二人の両片思い
「上川くーん!」



駅に着いて3分ぐらい経った後、綿原さんがやってきた。

駆け寄ってくる彼女に手を振る。



「遅れてごめんね」

「ううん、まだ時間あるし。寒いから中で待とう」



駅の中にあるベンチで時間を潰すことに。

白いコートを着てきた綿原さん。

その下に、トナカイのイメージをした茶色のニットワンピースを着てきたとのこと。



「上川くんは……なんかすごく着膨れしてるね。何着てきたの?」

「あー……普通のシャツだよ」

「本当に? さっきからカサカサ音がするよ? 中に何か隠してる?」



うわっ、怪しまれてる。

家着いてから見せようと思ったけど……少しだけ見せるか。

コートのチャックを胸元まで開けた。



「シャツにお菓子付けてきた」



みんなで食べる用のお菓子を持っていく担当だった俺は、個装のお菓子をツリーの飾りにするのはどうかとひらめいた。

色もこだわって、クリスマスらしくカラフルな個装をチョイス。

我ながらナイスアイディアだと思う。



「おぉ……斬新だねぇ」

「アハハ。そう? これに星のカチューシャもつけるんだ♪」



バッグから星のカチューシャを取り出して頭に装着。

これで立派なクリスマスツリーマンの完成だ。



「私てっきり、ライトをたくさん体に付けるのかと思ってた」

「それも考えたけど、お金かかりそうだったからやめたんだよね」



しばらくして、電車がホームに入ってきた。

コートのチャックを首まで上げて、お菓子達が潰れないように人混みを避けて乗り込んだ。
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