奥手な二人の両片思い
……予想通りだったな。

水沢くんは嫌がっているけれど、俺はその甘い匂いが大好きなんだ!


今日だって電車に乗っている時、ふわっと香ってきて、また胸がドキド……。



「透瑠くん、匂いに敏感だもんね」

「清花⁉ めっちゃ可愛い!」

「そういう服着てるの初めて見たわ」



自分の世界に行ってたら、いつの間にか清花ちゃんがドアの前に立っていた。

クールな彼女には珍しく、柔らかい印象の白レースのワンピースを着ている。



「お上品な服も似合うね~!」

「ありがとう……」



少し照れた様子で笑った清花ちゃん。
チラッと水沢くんを見ると、ちょっとあたふたしている。

おっ? これはドキドキしているのか?


綿原さんはどんな反応してるかな。

彼女を見ると……少し離れたところでスマホをいじっていた。

なんか楽しそうだな。何見てるんだろう。


こっそり後ろに回り、スマホを覗く。


えっ……⁉ 動画撮ってる⁉

同じように覗いた隼と目を合わせる。



「透瑠くん大丈夫⁉」

「えっ?」



見守っていると、興奮したのか、水沢くんの鼻から血がタラリ。


うわぁ、綿原さんの口元が、これでもかというくらいニヤついている……!


再び隼と目配せし、盛り上げようと2人に近づく。



「鼻血が出るほど見とれてました的な?」

「あまりにも美しすぎてドキドキしちゃったかんじ?」



隼に続いて口を開くも、こらえきれず口元が緩む。

だって、この一部始終を撮られていることに、2人とも全然気づいていないんだもん。
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