きみじゃなくてもいい
「光輝」
きみの手が、ぜんぶ持っていてくれればいいのに。
そう思っても聞き入れられない願いだとしても、ずっと、希ったきみの手を。
息をつくように手に力を込めて、不可抗力だと、光輝の背に腕を伸ばした。何も言わなかった。ただ同じように私を抱きしめて、髪に触れる。
「ごめん、髪、」
伸ばしてたのにね。って今さら惜しむことばが、何となく頼りない。
「ううん。いいの」
「怒んねーの」
「光輝がすきそうだから伸ばしてただけ」
髪を撫でる指先が温かい。でも、本当のことだ。光輝が、選ぶ女の子はみんな髪が長かった。一夜限りでも適当でも、髪が長くて可愛い子ばかり。
切ってやろうと思った。思ってたのに、私の髪を先にハサミで髪を切り落としたのは光輝だった。
それより。
「……光輝は、なんで、私にひとつも教えなかったの?」