きみじゃなくてもいい




ぴくりと肩が反応する。それにもっと身を寄せると、耳元で彼が息を吐き出した。



「雨衣は知らなくていい」



でも私は、知りたかった。



「なんで、」

「知って何ができんの?」



その嘲笑が、本当は優しいことくらいわかっている、けど。私が抱きしめるこの人は、ずっと傷ついてる。痣が、火傷のあとが。

肩から肘かけてできた疵。いつ負ったの、なんて訊いても答えてくれない。私は知らなかった、私は。

幾つも訊きたいことがあったから持ち出した賭けも、私がリセットしてしまったし、我が儘できみを抱きしめてる。

何ができんの、って、何もできない。

代わる、なんてそんなの侮辱以外の何でもない。



「光輝のこと、もっと抱きしめてあげられたのに」

「……雨衣らしくて笑える」



ふふ、と零れた笑い声が、震えていた。



「ま…真面目に言ってるのにっ」

「ごめんって、痛、」

「えっ、」






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