きみじゃなくてもいい
私じゃなくてもよかった、なんて、いやだ。私は光輝がよかった。消耗品のような道具のような言い方には聞こえないけど、何となく。
飽きるほどの何かで満ちた声色に、澄んだ空気がリアルに見える。
「雨衣じゃなくてもよかったけど、」
きみの肩を越してきらめく星空が、知らないふりをして閃を放った。
「おまえがいいよ」
そばにいるのは、私じゃなくてもよかった。
守るのは、私じゃなくてもよかった。
泣かせるのは、私じゃなくてもよかった。
愛を伝えてくれるのは、私じゃなくてもよかった。
しとりしとりと降る雫のように、吐露されていく光輝の心情に、私はいないはずなのに。
「おまえじゃなくても俺は、」
“ 見つけてたよ ”。
あの日きょうだいにならなくても出会えていた気がする。光輝がそう言うなら、そうなんだろう。理由は後付けでいい。