きみじゃなくてもいい




きみのせいじゃない。大丈夫。

そういった慰めも要らない真夜中。名前を呼べば、漸く足が止まった。




「すてき。逃避行みたいで」




名実共に、逃避行。

決行は真夜中、なんて、これ以上なく盛り上がるワンシーンな筈なのに。

呆気にとられたような彼の目が、私のことばを拒否するように嘲りを浮かべる。




「随分大きな寝言を言うね、お姫様」




まだ寝てんの?って言いたげに口端を上げた光輝。きみが先に謝ったくせに。ああ酷い顔してる。

私を滅茶苦茶にする、邪悪。








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