きみじゃなくてもいい




今夜は何もかもが澄んでいて。

紺碧を黒く潰した空も、中途半端に満ちた月も、いつも霞む星も。どれも役割を知ったような顔で澄んでいた。

時間帯に似合わない制服を着ただけの私たちを見咎める人はだれもいない。澄んだ景色だと、だれもいない世界だと、これほど息が軽いのに。



「じゃあゲームをしようよ」



急に立ち止まった私を怪訝な表情で見た光輝が、「正気?」なんて言う。



「私が勝ったら光輝が私の質問に答える、光輝が勝ったら私が光輝の質問に答える。簡単でしょ?」

「いいけど、でも今日は、」

「海まで競争ね。フライングはなしだよ」



言い淀む彼の表情はきっと本心。お優しいね、私を気遣うなんて。

口元を微笑ませると、渋々頷くきみに再び、お優しいね、と心のなかで呟いた。







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