きみじゃなくてもいい
苦しい、けれど、きっと光輝が取り上げた欲よりは痛くなくて。泥のように気怠い全身が、きみを追って仕方なくて。
夜がきらいだった。
真っ暗な時間が、何も考えたくないほどに。
背中を見るのがきらいだった。
私のことをすべて拒むその笑顔が。
「行か、ない……で、よ」
嗚咽より先に散り散りになったことばを最後に、とうとう足が止まる。きらめいたはずの世界が泥濘のように色を変えて、揺らいでわらう。
行かないでよ。行かないで。
そう言った私に、いつも、何も言わなかった笑顔が今夜だけは違った。
両手で顔を覆う。止まらない涙が、弱さを呈してるみたいで息が震えた。
行かないで。
私を置いて。