魔法に囚われて〜誘拐されて溺愛されてます〜 II

「そういえば、もうすぐパーティーの日だな。確かフランチェスカも来てくれるんだっけ？」

ユーゴはジュエルの体を起こし、乱れてしまった髪を元に戻しながら訊ねる。ユーゴの優しい指が触れて少しくすぐったい。

「はい。ここ最近は忙しくて会えていなかったので会えるのが楽しみです」

ジュエルはそう答え、微笑んだ。フランチェスカ・グラツィアはお金持ちの娘でジュエルの幼なじみだ。幼い頃に両親を亡くしたジュエルは、フランチェスカと共に育てられた。互いに「家族」と思っている。

そんなフランチェスカも来てくれるパーティーというのは、ユーゴの誕生日をお祝いするものだ。その時にジュエルは恋人として紹介されると大臣が教えてくれた。

「楽しみだな、ジュエルと踊るの」

ユーゴがそう微笑み、ジュエルは「当日までにもっと上手に踊れるようにしますね」と胸元に手を押さえながら言う。

庶民として暮らしていたジュエルは、王族や貴族が当たり前にできることなど当然知るはずもなく、今でも勉強中の身だ。礼儀作法などは問題ないのだが、楽器やダンスはまだまだ苦手である。