地味で根暗で残念ですが、直視できないくらいイケメンで高スペックな憧れの先輩に溺愛されそうなので……
午前25時。
私はなぜか、冬野さんとファミレスに入っていた。
あれから、店を閉めて冬野さんの車で家に送って貰うべく車に乗りこんだ訳なのだが、私が通りすがりのファミレス店の前で、そこのパフェが好きだと言ったら、お茶をしようって話になって、私はバナナパフェに溶かしチョコレートかけて食べるパフェをオーダーし、冬野さんはヨーグルトパフェを注文した。
「お腹空いてたら、別に好きに頼んで良いよ。奢るから」
「大丈夫です」
「遠慮しないで」
「本当大丈夫です。賄いで足りてます。冬野さんこそ、食事良いんですか?」
「言われてみれば、僕もまかないでお腹は足りてた。パフェは別腹だけどね」
「私もです。意外と女子ですね、冬野さん」
( ゚Д゚)Simatta ワタシノサマナゲセンノモノガ
バーテンの服から、普段着に着替えた私服姿の冬野さん、何か新鮮。
でも、きっと会社の人がこの光景を目にしたら、なんてアンバランスなペアだと目を細める事だろう。
駿馬と家畜の豚の様な取り合わせだ。
そう思うと、自然と俯き加減に肩をすくめていた。
「眠かった」
「え、いいえ。何か、緊張しちゃって」
「なんで?」
「だって。もう会社辞めたら会う事無いんだろうなって思ってたんで」
おどけて笑って、すっごく言ってみて悲しくてむなしかった。
こんな一時はきっと偶然で、またすぐ、私と冬野さんの縁なんてまた切れてしまうんだ
会社を辞めて三年。
また、会えなくなったら、次は何年生きれば、会えるんだろう。
とっても好きだった。
欲しいとは思う以前に、欲しいと思える様な人間にすらなれない自分が情けなくて諦めよう、忘れ様と思ったのに。
まもなく運ばれてきたパフェをそれぞれ愉しんで、お店を出た。
春の夜風が気持ちよくて街角のネオンと正反対に人通りのないシンとした雰囲気の中、冬野さんと二人。
「冬野さんて、自分の事俺っていうんですね。前はずっと僕って言ってたのに」
「そりゃ、会社で上司に向かって俺なんて言えないし、そうだね仕事中もかな、でも普段は俺って言うんだよ」
「何か新鮮ですね」
私がそういうと、冬野さんは花の様に微笑んだ。
「石崎さんは可愛いね」
「からかわないでください」
「いや、からかってない。本当に好きだったから」
何かさっきから、私の事、好き好きって言われている幻聴が止まらないんですけど。
明日、土曜の朝一で耳鼻科を受診して鼓膜が壊れてないかレントゲンを取りに行こう。
全ての問いかけを愛想笑いで返しパフェを食べ終え、冬野さんの車の助手席に乗り込んだ。