地味で根暗で残念ですが、直視できないくらいイケメンで高スペックな憧れの先輩に溺愛されそうなので……
「で、石崎さん」
「え、何」
「今日はそんな石崎さんに、最後の選択をして貰おうと思っています」
え、センタクって洋服じゃなくて。
びくっと肩が震えるのを見て、意味深にちながニッコリとしてさらにスマホを操作している。
え、遠隔操作で部屋を爆破したりするつもりではなかろうか。
一体何をしているんだろう。
「僕と付き合うか、次、冬野さんに会った時は、逃げずにちゃんと好きと言えますか?」
ちなと付き合う。
そんな会社の女子を敵に回すじゃないか。
え、冬野さんに告白するって、会社の女子に語り継がれる笑い話になるではないか。
マキさんに後ろで大声で嫌み……いや罵詈雑言を言われそうじゃないか。
どっちも嫌なんですけど。
「どっちもパスは?」
「良いですよ。じゃぁ、僕酔った勢いで石崎さんに無理矢理せまりますから」
「ちなは、素面でしょ!」
「え? もう違いますよ」
そう言って、ちなは空のショットグラスにテキーラを注いで、飲み干してライムをかじった。
「え、ズルい」
「でも、酔いますから。テキーラですから。さあ。どうします」
「どうするもこうするもないよ。冬野さんに会う理由なんてもうないんだから、もう会えないよ」
何か意味わかんない状況だけど、ずっと、分かっていても、口に出すと想像以上に胸が苦しくなった。
もう冬野さんに会う理由がない。
会えない。
もう会えない。
「じゃぁ、僕が居ますよ。僕にしておけば、良い。ほかの男じゃなくて」
「ちな!」
ちなが私のそばまで来て、私を抱きしめて、私を後ろに押し倒した。
カーペットの上に落ちる前にちなが頭を打たない様手の平を添えてくれたので痛無かったけど。
頭を振って、酔いが急激に回って気が遠くなりそうだった。
「僕じゃダメですか?」
「なんで、泣くんですか?」
ちなにそう言われて、私はやっと自分が涙をこぼして泣いている事に気が付いた。
何やってんだろう。