地味で根暗で残念ですが、直視できないくらいイケメンで高スペックな憧れの先輩に溺愛されそうなので……
Night Drive×酩酊×命題=眠れない夜
「靴、足下に置いとくから。忘れものない?」
「大丈夫です」
冬野さんは車の助手席に私を乗せて、運転席へ乗り込むと車を発進させずに、私を見つめて腕を組んだ。
「色々聞きたいことがあるけど、取り敢えず気分悪くない?」
「そんなに酔ってません。……でも」
気分より、今私が一番気遣って欲しいのは、違うことだ。
「でも、何?」
「差し支えなければ、窓開けて良いですか?」
「何で」
「こんな密室に居たら、お酒の匂いが充満しそうで」
多分このまま窓閉めてたら10分でテキーラ臭が充満して。
運転席の冬野さんを呼吸でお酒に酔わせてしまいそうで怖いのだ。
だってもう自分の肩からテキーラの臭いが醸し出てるの。
分かるもん。
「気にしないで良いよ」
「じゃ、降ろし」
「寒くなったら言って、もう」
冬野さんはそう言ってため息混じりで車のエンジンをかけてみた助手席の窓を開けてくれた。
「エンジンかけたから、もうでるよ」
住宅地でエンジンかけっぱなしにするわけには行かないから、妥当だ。
わざわざことわりをいれるのは、私が悪酔いするのを気遣ってだろう。
「大丈夫です、平気ですから」
「本当かな…」
そう言いながらも冬野さんは車を走らせ始めた。
暫く私のようすをうかがっている様だったが、五分くらいどこに向かっているのか分からない道すがら。
通りすがりのコンビニの駐車場に車を停めると私に再び声をかけた。
「携帯、通知きてないか確認してみて」
私は、冬野さんの指示通り、携帯を確認して驚いた。
冬野さんからの着信と新人のセンちゃんからの着信とSMSのメッセージがいくつもあった。
「え、冬野さんとセンちゃんから一杯入ってる」
「悪いけど、センちゃんの履歴教えて欲しいんだ。センちゃん、お父さんとバイトの事で喧嘩して家に帰ってないって家の人が心配してるんだけど、行方が分からないんだ」
「嘘っ」
私は慌ててセンちゃんから連絡がきた内用を確認した。
23時に着信。
23時15分、メッセージ。
(夜分に、すみませんでした。気にしないでください。)
私は、そのまま内容を冬野さんに伝えた。
「良かったら。どうしたの。何か相談あったら話して欲しいって、掛け合って貰えると助かるんだけど」
「分かりました。最初メッセージで送って、それで反応があったら電話してみる。で良いですか」
「俺もそれが良いと思う」
「了解です」