地味で根暗で残念ですが、直視できないくらいイケメンで高スペックな憧れの先輩に溺愛されそうなので……
お通しはポテトサラダ。
具はキュウリとスライス玉ねぎで、ハムとかベーコンとか入ってないシンプルサラダ。
塩味濃い目、コンソメとマヨに隠し味の粒マスタード。
うーん、私好み。
「はい、前菜」
程なく私と妹の間に出された前菜のプレート。
キノコとパンチェッタ(塩漬け肉)のキッシュ、野菜のコンソメゼリー、生ハム、レーズン、干し杏子。
まるで、宅飲み(自宅で飲むこと)で私が毎度妹に作さられている酒のツマミの様ではないか……。
否、そのものではないか?
「てん、これって…」
前菜プレートに流し目しながら尋ねるわたしに、妹のてんは言った。
「私好みの前菜プレート。名付けて、姉の作る肴(さかな)」
細長のグラスに並々注がれたお酒をぐっと飲み干し、私に向かって親指を立てた。
GJ(グッジョブ)=良い仕事してるでしょ?
ってことだろうか?
さっき彼が持ってきた飲み物。
一口飲んだ時から、これまた違和感あったけど。
はちみつレモン、イチゴシロップ、全体の1割程度のテキーラをベースに.
グレープフルーツとオレンジ果汁と炭酸水で割ったもの。
私達姉妹の間ではこの飲み物を悪魔の飲み物と呼んでいる。
「あっ、マスター」
「どう、お店の雰囲気は?」
呆れていると冬野さんが再び私たちのいるカウンターに接近してきた。
そして、私ではなく妹の方に視点を定め微笑む。
ワタシは、嫌な予感がした。
「とっても良いと思います」
「それは良かった。てんちゃん、このプレート、うちの店で出して良い? てんちゃんが来るとき、毎回サービスするから」
「良いですよ」
私のレシピなのに!!(⊃ Д)⊃≡゚ ゚
勿論、口答えなんて度胸、ミジンコ並みに微塵もない、チキンの私はその場に項垂れるしかなかった。
何の駆け引きかやり取りか、私の考案したレシピが目の前で冬野さんに、流出……否搾取されていく。