愛で壊れる世界なら、
痛い。
空も、風も、花も、光も。初めて見る世界は綺麗で、とても綺麗で。こんなにも美しい風景があることに驚いて、泣きそうになるくらいに胸打たれた。
太陽が照っていても心配していたような全身が焼け爛れたりといった事態も起こらず、悪魔が見える人間にも出会わず、むしろ想定外に好意的な天使なんてものがいることを知った。
地上に出てきてよかったと、心から思った。思っていた。
「……今日も村を見ていたの?」
いつもの泉に顔を出したギルウェルに、エルザは静かに問うた。
待ち合わせていたわけではない。互いに自然に足を向ける、相変わらずただそれだけ。
日は傾いて風は凪ぎ、木々の上から鳥たちが囁くばかり。隣り合わせの世界ローディムにどことなく似た雰囲気が漂う。
「人間たちを見守るのが天使だからね。いつだって見てるよ」
「天使っていうのは同じ場所、同じ人間ばかり見るものなの……?」
「いや、そんなことはないけど」
いつも通りそばに腰かけるギルウェルは機嫌がよさげ。首を傾げはするものの、エルザが何を思い尋ねているのか想像もつかないようだ。