愛で壊れる世界なら、


 彼らの遊び場は、そのうちの誰かの家の庭であることがほとんど。シエルだけは自分の馬を持っていたものの、専用の馬車は誰も持たず、別荘の敷地内から出るには親たちの許可が必要で、そもそも自分たちの世界がほとんど三人の間で完結していたから外出したいともさほど思うことがなかった。

 そんな彼らにも秘密があった。大人には内緒の隠れ家だ。

 いつからそこに建っていたのか、誰の所有なのか、木々に隠れ忘れ去られたようにぽつりと建つ小屋。互いの敷地の奥にあたり、古びているわりには小綺麗で、かといって手入れが行き届いているわけでもないと見えるから、長らく放置されていることは確か。

 見つけたのは偶然、今のように大人たちの目を離れ散歩をしていた時のこと。みんなでつたないながらに綺麗にして、時には一人で、時には三人一緒に、よく入り浸っていた。

 今日もまた、嫡男だ令嬢だという立場から逃れるようにして隠れ家で束の間を過ごし、窓から見えた曇っていく空模様に、家の者に無闇に心配させても仕方ないと外へ出た。次の瞬間、



 ――雨が。



 激しい雨に全身を打たれて、前方を睨み据えていた。
 暗い中でもほのかに光るような後ろ姿。そうすると考えていたわけではなかった。気がついたら腕が伸びていて、手のひらに感じた体温、短く上がった声、続く滑り落ちていく音、長く響いた悲鳴。
 こんなつもりじゃなかったと立ち尽くして、これでよかったのだと嗤いが込み上げた。


 ――あめ、が、


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