愛で壊れる世界なら、


 ――アルトラ伯爵令嬢レイチェル。

 代々続く伯爵家の三女として生まれ、何不自由なく暮らしてきた。兄弟姉妹では下の方で、甘やかされてきた自覚はある。
 わがままも容易に許されて、執事もメイドも、仕方ないなと笑ってくれるのが常だった。
 優しい人たちに囲まれて、大好きな幼なじみがいて、そう思っていたのに……


 一日ですべてがひっくり返った。


 目元を覆うようにのせた腕が重い。寝転がっているはずなのにぐらぐらと頭の中が揺れていた。
 ザァザァと、雨の音が聞こえる。寝たきりで外を見ていなかったけれど、今日も雨だったのだろうか。


 早くやめばいい。やんでほしい。雨は悪夢を連れてくる。

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