不器用同士


「今日は少し遅かったのね、相楽くん」


幼稚園の先生たちに捕まっている相楽くんの顔は猫被りモードのにこやかな笑顔。


その裏を知ってしまうと、あの笑顔を人に向けていることがすごい違和感。


顔はいい相楽くんはこの幼稚園で人気なのか、若いお母様方まで顔を染めて見つめている始末。



…なんかここに私いてもいいのかな、幼稚園の前で待ってようかな。



少し居た堪れない気持ちになっていると、相楽くんに手招きで呼ばれた。


「光莉ちゃん、こっちこっち」


周りの視線を一斉浴びて、逃げられなくなった。



「…はい」


何度でも言いたい。


この男に関わると面倒ごとが起こる。


現に今、ニヤニヤしている相楽くんはこの状況を楽しんでいる。


嫉妬に駆られた幼稚園の先生、お子さんを迎えに来たはずのお母様方。


…お子さん迎えに来たはずなのにまだ帰らなくてもいいの?

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