不器用同士
「光莉お姉ちゃん!」
屈託なく笑う瑠璃ちゃんに呼ばれなれない名前を呼ばれて、少しむず痒い気持ちになる。
兄弟も周りに知り合いの子供なんていなかったから初めて呼ばれた。
「うん」
なんだか良いなと思った。
「さぁ、着いたよ」
エレベーターのドアが空き、何個かの部屋を通り過ぎて立ち止まった。
タッチ式で開いたドアの前に立っている相楽くんをチラッと見た。
「どうぞ」
もう引き返せないのはわかってたけど、ここに入ったら相楽くんと関わることになる。
先に入って行った瑠璃ちゃんの背中を見て、相楽くんに視線を戻した。
「お邪魔します」
バタンっと背後でドアの閉まる音が聞こえた。