不器用同士


「いいじゃん、ちょっとぐらい。君そういう子でしょ?」


ニヤニヤしながら耳元で喋ってくるおじさんに鳥肌が立った。



そういう子ってなんなの。


私だって叶わない力で迫られたら普通に怖い。



「違います!」



震える体に力を込めて、おじさんと距離を取る。


未だに手首を離してくれなくて、振り払ってもびくともしない。



「違わないでしょ。いいから行こう」


聞く耳を持たないおじさんに引っ張られる。


周りは誰も私を見ようとしない。



こんなめんどくさい場面、誰も助けたくないんだろうな。


こんな時まで、冷静にそんなこと考える自分に嫌気がさす。


慣れてるからこそ、余裕が生まれてる自分が嫌い。

< 5 / 89 >

この作品をシェア

pagetop