不器用同士


「あ、…ごめんなさ」


「もういいよ」


絢音さんの言葉を遮るように言う相楽くん。



一気に突き放した様子をぼーっと一歩引いて見る私。



周りも修羅場に気がついているようで注目を浴びている。



「じゃあね」


と、歩き出した相楽くんを泣き出しそうな目で見つめている絢音さん。



ちょっと待って。


この状況を回収して行けよ。


「待って翔琉!お願い!!」


ついに泣き出してしまった絢音さんと何もできずに突っ立っている私。



なんか、これ私が泣かせたみたいに見えない?



「あれ、泣いてない?」


「げ、修羅場だ修羅場だ。女って怖!」



周りから聞こえてきた声に頭を抱えたくなった。



「はぁ…嘘でしょ」


「うっ、うぅー」


未だに廊下の真ん中でしゃがみ込み泣き続けている。

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