クリスマスイブ、牛丼屋にて。
21:03 相沢と穂高



「ありがとうございましたぁー、またお待ちしてまぁーす」


普段以上に間延びした穂高(ほだか)の声。

店を出て行くお客さんの手には、革のカバンとお持ち帰り用の牛丼が入ったポリ袋。


あきらかにやる気のなさそうなその声色に、

牛肉を煮込んでいる鍋をかき回していたわたしは視線を上げた。



「ちょっと穂高、やる気ないの声に出すぎ」

「だってヒマなんだもん。ヒマすぎで逆に疲れる」



お持ち帰りコーナーからノロノロと厨房に戻ってきた穂高は、心底うんざりした顔だ。



「今日がクリスマスイブだからってここまで客が来ないものかよ」

「ねー、穂高。それ去年も言ってた」

「そうだっけ?」



つか、よく覚えてるな。なんて大きなあくびを隠そうともしない彼に、わたしはため息をついて鍋の火を下ろした。



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