クリスマスイブ、牛丼屋にて。



「うー、さっむい」

「さみーな」



体が冷えてくると口からは寒いという単語ばかり出てくるから不思議だ。



2人して寒い寒いとつぶやきながら歩いていると。

隣にいた穂高がふと、公園の前で歩みを止めた。

穂高が立ち止まった拍子に、手に持っていたプリンの袋が、カサリと音を立てる。

え、何?




「なぁ、」

「なに?」





「…プリン、食べねえ?」


「はぁ!?え、今っ?」



唐突すぎる穂高の提案にわたしは素っ頓狂な声をあげてしまった。


だって、今の今まで寒い寒いいってたじゃん。
早く家に帰りたいって空気だったじゃん。

突然どうしたのよ。




「あ、ちょっ、穂高!」

困惑するわたしを置いてスタスタと公園のベンチに向かってしまう穂高。



いや、全然意味がわからない。


仕方がないので小走りで彼の元に駆けつけるが。
ベンチに腰を下ろした穂高は、すでにプリンのフタを開けてその一口めを頬張っていた。



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