クリスマスイブ、牛丼屋にて。
「…じゃあ、な」
ゆっくりと口を開く若松さん。
「そんな朝倉ちゃんに、若松サンタがいいものをあげよう」
若松さんは机の右上の角に置いてあった茶封筒に手を伸ばし、それを私に差し出してきた。
え、突然、なんなんだろう。
空になったプリンの器とスプーンを置いて、差し出されたそれの中身を覗いてみる。
「……アクアリウムのチケット?」
「最近、駅の中に新しくできただろ。」
「え、いいんですか?うれしい」
予想外のものに、私は表情をほころばせる。
先月の半ばにオープンした屋内水族館は当初からかなり話題になっていて、機会があれば行ってみたいと思っていたのだ。
「チケット2枚ありますね。誰を誘って行こうかな…」
わくわくしながらシフト表を眺めて、自分と同じ日に休みがかぶっている親しい従業員を探す。
あ、相沢さんと休み一緒の日がある。
誘ったら来てくれるかな。
なんて一人ではしゃいでしまってから、若松さんがずっと黙っていることに気がついた。
あ、私ったら。