クリスマスイブ、牛丼屋にて。


「あの、若松さ———」





「朝倉ちゃんさあ。



それ、俺と行ってほしいって言ったら、笑う?」





「っ……、」



びっくりして振り返ると。


若松さんは組んだ足の上で、タバコを挟んだ手に頬杖をついてうつむいている。


さらりとした茶髪が横顔を隠していてその表情はわからないけれど、彼の耳の縁は見るからにじんわりと赤くなっていた。




若松さんが、照れてる。


自分よりも大人の人の、そんな様子に遭遇したことがない私は、釣られて自分の頬も熱くなっていくことを自覚した。



……だって、それって。




「28日、朝倉ちゃん休みだろ。
予定空いてるなら…、一緒に行かねぇ?」

「……。」



「…あの、一応言っとくとさ。
デートしませんかって話なんだけど」

「……。」




「いや?」



どこか気まずそうに、私を上目遣いでうかがってくる若松さん。



私は耐えきれなくなって両手で顔を覆った。

顔や耳はじんじんと熱を持つし、心臓のあたりがぎゅう、と痛くなる。




急に、それは、ずるい。



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