クリスマスイブ、牛丼屋にて。
「……いやじゃ、ない、です」
かろうじて絞り出した私の言葉に、若松さんが嬉しそうに笑った気配がする。
そしてついでに小さく「よっしゃっ」とつぶやく声が聞こえた。
「ありがとうな。ホント嬉しい」
顔を覆ったままの私はその言葉にもうなずくしか出来なかった。
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バックヤードの扉を開けると、ひらひらと雪が舞いはじめていた。
降ってくる雪の冷たさも、刺さるような鋭い空気も。
いまはただ、熱った顔にはちょうどよかった。
店から出ようとする私の背中に、若松さんが声をかけてくる。
「夜も遅いから、気をつけて帰れよ。
何かあったらすぐに戻ってくるかコンビニに駆け込め」
「…はい」
「あと…、28日、楽しみにしてる」
その言葉に振り返ると、眉を下げて照れたように笑う若松さんが戸口からこちらを覗いていた。
私も、楽しみにしてます。
なんて言葉には出来なかったので、ただ大きく首を縦に振る。
それで満足したのか、若松さんはひらりと手を振ってくれた。