クリスマスイブ、牛丼屋にて。
「結局あれから客、来なかったな」
「そうねー」
磨いたスプーンと箸を手分けしてテーブル席に戻しながら、何気なく窓の外を見る。
冷たい風がふきすざぶ中、首をすくめながら足速に店の外を歩いていく人たちがちらほら。
あの人たちも、家に帰ればごちそうとケーキが待っているんだろうか。
「よぅし、そろそろ上がれ高校生ども!」
ちょうど作業が終わった頃に、制服に着替えた若松さんが声をかけてきた。
はあ、やっと帰れるんだ。
思わずほっ、と一息つく。
今日は暇だったせいか、随分と時間の流れが遅く感じてくたびれてしまった。
ひま疲れってやつ。
もちろんそれは穂高も同じだったようで。
目があった彼はため息をついて大げさに肩をすくめてきたのだった。