クリスマスイブ、牛丼屋にて。
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「「お疲れさまでーす」」
「あ、おまえらちょっと待て」
退勤の打刻をし、早々に着替えて帰ろうとしたわたし達を呼び止めてきた若松さん。
彼はいそいそと、外にでようとバックヤードの扉に手をかけていたわたし達の元にやって来た。
その手には持ち帰りデザート用の小さな袋が2つ。
「今日はクリスマスだ、プリン持ってけよ。」
「え、いいんですか」
この牛丼屋唯一の甘味、オリジナルプリン。それが入った袋を穂高とわたしに握らせて、若松さんはニヤッと笑う。
「特別だぞ。今日出てくれてありがとうな」
「……うれしいっすけど、そこはケーキが良かった」
「ねー」
「文句たれてないではよ帰って寝んねしな、高校生ども。
悪い子にはサンタさんこねーぞ」
「うわ、若松さん俺たちのことバカにしてる」
若松さんは比較的わたし達と歳が近いからか、こうして軽口をたたき合うこともしばしば。
わたし達はそんなちょっと口は悪いけど気兼ねなく接することができる、気のいいお兄さんじみた若松さんが、上司として好きだったりするのだ。
「気をつけて帰れよ」
「「はーい、お疲れ様でーす」」