クリスマスイブ、牛丼屋にて。



外に出た途端、容赦なく冷たい空気が顔を打ちつけてきて思わずうっ、と唸る。

それでもわたしは歩きながら顔を上げて空の方を睨んだ。



「なんだ、天気予報では夜には雪降るって言ってたのに。
降ってないじゃん」

「なに、ホワイトクリスマスが良かったのか」

「まあ、雰囲気だけでもね、味わいたかったというか」


「俺は雪降ってもっと寒いよりか、マシだな」



だろうね。

穂高はそういうことに興味無さそうだ。



店のある大きな通りを抜けて住宅街に入ると、透明な壁でくっきりと隔てられているかのように、閑静になる。

ぽつりぽつりとほの白く道を照らす街灯沿いに2人並んで歩いていく。



穂高とは高校は違えど中学の校区が同じだ。

バイトの上がり時間が被った日は、遠回りになってしまうにも関わらず、穂高はわたしを家まで送りとどけてくれる。


決して「家まで送るよ」なんて公言したことはないけれど、当たり前のようにそうしてくれていた穂高の優しさは、まあ、嫌いじゃなかったり。



< 9 / 32 >

この作品をシェア

pagetop