年上幼なじみのあぶない溺愛
一度、帰ろうかと悩んだけれど、今ここで勢いのままに会って話さないと、春哉くんに声をかけられない気がした。
「……うそ」
ここで災難なことに、雨が降ってきた。
最初は小雨だったけれど、次第に雨が強くなっていき、さすがの私も改札近くの屋根がついている場所に移動し、壁に背中をつけて待っていた。
ここまできてしまったら意地でも春哉くんが来るまで待とうと思い、駅に着いてから2時間が経とうとしていたときには……。
「びしょびしょだ……」
最悪なことに、風も強くなってきたせいで横殴りの雨に打たれていた。
鞄は自分の後ろに置いてなんとか死守していたけれど、代わりに制服や髪はびしょ濡れになっていた。
もしかして春哉くんは私より早く帰ってきており、もう家にいるのだろうか。
けれど今日はいつもより早く駅に着いたし、きっとそんなことはないはずで……。
「……えっ、志羽?」
おどろいたような、けれど柔らかな声が耳に届き、ドクンと心臓が大きな音を立てる。
久しぶりに名前を呼ばれた気がして、途端に涙が込み上げてくるのを我慢しながら顔を上げる。