年上幼なじみのあぶない溺愛



「じゃあ雨が降ってきた段階で傘を買って、家に帰るのが正解だよね?ほら、手もこんな冷たくなって……」

 春哉くんは私に近づいてきたかと思うと、手をギュッと握ってくれた。

 春哉くんの手から温もりを感じたけれど、私の手は雨で濡れていたため、慌てて離そうと思った。


 けれど春哉くんに思いのほか強く握られ、離せなかった。


「あの、春哉くん……」
「とりあえず帰るよ」

「だ、ダメ……!それより、先に」

「家に帰ることより大事なことってある?早く制服を脱がないと風邪ひくよ」


 私への態度が冷たく……はないけれど、春哉くんが不機嫌なのはわかる。

 そのため春哉くんに逆らえず、春哉くんの傘に入れてもらう形で家を目指して歩く。


 最初は入れてもらうのは悪いと思い、断ったけれど、肩に手をまわされ、春哉くんの意思で同じ傘に入れてもらっていた。


 怒っている相手にも、こんな優しい対応をしてくれるなんて。

 ここは放っておくのが普通のはずなのに、春哉くんは隠し切れないほどの優しさであふれているのだ。

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