年上幼なじみのあぶない溺愛



「志羽、今日は前嶋さんとふたりだけって言わなかった?」


 沈黙が流れていると、それを破るようにして春哉くんが口を開いた。

 よかった、これは嫌な空気を変えるチャンスである。


「やっぱり、前回と同じメンバーで行こうってなって……それに、春哉くんたち先輩も4人だから、私たちも4人のほうがバランスがいいかなって……」

「バランス、か。それは志羽の意見……じゃ、なさそうだね」


 春哉くんはチラッと望美ちゃんを見てそう言った。

 やっぱり人数が多くて迷惑だったかもしれないと不安に思っていると、沙良先輩が「望美、いい仕事をした!」と望美ちゃんに声をかけていた。


 望美ちゃんも「ありがとうございます!」とお礼を言い、訳がわからなくなる。


「戸崎さんの指示なの?」

「まさか。ただ彼女と私の思考が似ているってことは確かだね。私も望美なら、たぶん同じことするかな」

「……本当にひどい性格をしているよね」


 心なしか、春哉くんが不機嫌な気がする。

 春哉くんを見ていると、作り笑いを浮かべているのがわかり、無理矢理笑っているのだ。


「あの、春哉く」

「じゃあ勉強しようか、志羽。わからないところは俺に聞いてね」


 “俺に”を強調され、前回のテストで春哉くんにみっちり叩き込まれたことを思い出した。

 悪い点数を取るのは許さないよと、遠回しに伝えているのかもしれない。

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