明日、雪うさぎが泣いたら
「いつ……? 」
なくてもいいって言ったのに。
もちろん、真っ白なうさぎに赤い目はよく似合う。あった方が可愛いかもしれない。
でも、ちゃんと葉っぱの耳も付けてもらえた。
何より、下らないお願いごとを聞いて、その手で一緒に作ってくれた。
それで、十分嬉しかったのに。
《姫!? 》
二匹のうさぎに埋め込まれた、南天の実。
もっと近くで見たいとか、触れてみたいと思う間もなく、思考が停止したままに私の身体は雪うさぎの方へと傾いていた。
「馬鹿。……たった今だ」
まだ雪の積もったままの地面に飛び込もうかという身体を支え、苛立ちを隠せずにいるやや低い声が言う。
「ど、どこからいらしたんですか? 」
抱き留められたと同時に拘束され、もがく。
じたばた暴れながら出る言葉は限られていて、そんなあまり意味のないことを尋ねてしまった。
「人を不審者みたいに。そこに、普通に立っていた。ようやく、堂々と逢えると思ったのに、お前がまた……」
何か嫌なことを思い出したのかそこで区切り、ゆっくり息を吐いた。
「……心臓に悪いことをするから」
いつしか大人しくなった私を見て、腕の力を弱めようか迷ったように眺め――よりいっそうぎゅっと抱かれた。
少し前なら、過保護な彼に笑い、申し訳なく思っただろう。
でも今は、伝わってくる愛情が熱く身体を焼くようでヒリヒリと切ないほど痛む。